溶射処理入門編

3.溶射工程の段取りや手順などの紹介

溶射工程には、段取りとなる前処理、溶射処理、後工程となる仕上げ加工と、大きく3つの工程に分かれています。ここではその工程の段取りや手順を紹介致します。

溶射の前工程

通常、溶射施工対象の表面は油やグリスで汚れております。溶射前には表面の汚染物質を除去しなければ溶射対象面に汚れが移行してしまう恐れがあります。また素地は洗浄されていなければ溶射被膜の性能が十分に発揮されなくなり使用できなくなる可能性も起こります。

説脂洗浄

溶剤洗浄

主に、鉱物油などの油汚れに対して溶剤洗浄を行います。有機溶剤を用いて油を溶かします。有機溶剤の使用の際は防護及び公害防止手段をとる必要があります。

水溶性洗浄

スプレー洗浄

ポンプにより加圧された洗浄液をノズルより噴射し基材表面に吹き付け汚れを取り除く方法で、比較的軽い汚れの大型構造物に使用するケースが多くあります。

浸漬洗浄

洗浄液を溶かした水溶液中に素材を浸漬し洗浄する方法で、素地の寸法は浸漬層の容積に限定されるので大きなものには向きません。

超音波洗浄

カーボンのような強固に付着している汚れがある素材及び複雑な形状をしているものに適しています。

加熱説脂

鋳鉄または多孔質の素地に油が内部まで浸透しているものに対しては、250~450℃に加熱して浸透した油を除去します。加熱にあたっては素地が均一に加熱するように注意しなければ、油残りが発生してしまうことがあります。大型のワークには火炎清掃をすることもあります。

酸化物の除去

素材表面の酸化物の除去方法として最も効果的な方法はブラスト処理です。酸化物除去と粗面処理は、通常区別して考えます。

アンダーカット

アンダーカットは必要な被膜厚さの確保するためや密着性の向上などのためにワークの一部を切削することを言います。

マスキング

粗面処理(溶射被膜がワークに強固に接着するための処理)をする場合や、溶射する面以外の場所に保護テープなどを貼り付ける事をマスキングといいます。穴部分、ねじ穴なども溶射やブラスト材料が侵入しないようにします。マスク材として一般に使用されているものはグラスウールテープやアルミ箔テープとなります。

粗面処理

溶射被膜成膜前の粗面化処理は、非常に重要な工程となります。粗面処理は溶射被膜の密着性を向上させるために素地荒らし凸凹にします。この凸凹面があることによりアンカー効果を発揮し、溶射材料が密着して固定化しやすくなります。粗面処理にもいくつかの方法があります。

機械加工による溝などを作る方法

V字型、U字型に溝を切り、溝にローレットをかける。

ブラストによる粗面化する方法

溶射被膜がなりやすい粗さへブラスト処理する方法です。 カーボンヘブラスト処理を行わず、溶射処理を行い、強力な接着テープを貼り付けて剥がした際の写真(左)と、同じ条件でブラスト処理を行った際の製品(右)の剥離試験の写真を掲載いたします。ブラスト処理をしていない製品は剥離が発生しましたが、ブラスト処理を行った製品は剥離しておりません。粗面処理にはこのような効果があります。

下地被膜を溶射する方法(ボンディングコート)

ワークの素地と必要な溶射被膜の間に一層下地を溶射を施す事を言います。金属では化学結合して強く密着する薄い下地被膜を施すことが多く、カーボンの場合は素地とセラミックス溶射被膜との熱膨張の差によって表面に生じるせん断応力を緩和したり、被膜の密着性を高めひび割れ防止をする効果がある材料をボンディングします。研削、ブラストした素地表面の粗さを高める効果があります。 上記の粗面処理を複数施しより強固な下処理を施すことが最適です。

溶射の後工程

溶射を施した製品に後加工を行い製品を仕上げます。現在、溶射製品は多くの環境で使用されております。その為、被膜に求められる性能も多岐にわたり、単に溶射しただけではそれぞれの要求に応じ難くなってきております。溶射の後工程は、溶射した後にそれぞれ状況に応じた熱処理(溶融、拡散、加圧焼結)

  • 被膜の気孔を埋める封孔処理・指示された寸法と面粗度を得るための研削・研磨処理があります。

熱処理

溶射皮膜の熱処理は、一般的には、被膜の組織変化や応力除去などの効果を得るために行います。合わせて、皮膜の機械的特性を向上する事もできる有効な手段となっております。

封孔処理

溶射したままの被膜は溶射粒子が相互に圧着し合って積層されたもので、多孔質(1~10%)となっております。被膜の気乳は溶射の種類、溶射装置の種類や溶射条件などによって異なります。溶射被膜の封孔処理は皮膜の開孔に封孔剤を浸透させて気孔を密閉し、被膜の化学的性質と物理的性質を改善する処理方法となります。封孔処理を施すことにより被膜内部は強化され、表面はなめらかになります。その為、浮遊している埃やゴミの蓄積が少なくなり、溶射被膜の寿命がそのまま使用する場合に比べて長くなる事が期待できます。

切削加工

溶射被膜の表面が、機械部品として用いられることが多くなってきており、使用される目的や用途に応じて荒仕上げから精密仕上げ加工までの各種の機械加工が必要となってきております。また、切削のみのならず、ラップ仕上げ、バフ仕上げ、ブラスト加工及びバレル仕上げなどが施される事もあります。

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